社会の窓から

社会の窓を開け放ち、世界の人々と交わろう。

香港デモ そのほか 2019.11.12 日記

2~3日前は、もうダメだ、と思って、一応読者の皆さんに「遺言状」を残しておいたのですが、今日は、ややマシな状態になっています(油断は出来ない!)。

昨日久しぶりに、モニカと小七の3人(ご主人とは長い間会ってないけれど深圳で一生懸命働いてるので仕方がない)で食事して、嬉しかったこともあるのでしょうが、小七の「ジャー」に喝を入れられたのかも知れません。

モニカは、一応ちゃんとした大学出ていて、頭も良いし、そこそこ(たぶん三世よりも、笑)常識もあるはずです。都会での生活も長いし、中国人として(収入はともかく)、民度は中くらいか、やや上層のレベルにあるのでは、と思っています。僕の自慢の弟子です。

僕のことを「ジュンゾウ」と呼んでくれるのは、21年前に死んだ母とモニカだけです。まあ母親替わりです。母親には辛い思いばかりさせたので(お金貰うとき以外は「クソババア」と追い返していた)、モニカには優しく接したいです。小七は、70歳近く歳の離れた妹のようなものです(実際、僕には、生まれてすぐに亡くなった、60歳近く年上の姉がいます)。

でも、「ジャー」容認は困るよなぁ。日本人として毅然とした態度を示したいのですが、ここは中国、そうもいかんのです。まあ、大人になれば止めるでしょうし、少々水たまりが出来たところで、社会にとって大した実害はない。

そう思えば、なんか気が楽になります。

中国は、あちこちに謎の水溜まりが出来たまま、世界一の大国に向かって、ひた走っているわけです(美しいまま滅びてしまいそうな「美しい日本」とは対照的です)。

(これは言っちゃいかんのだろうけれど)香港の若者が傍若無人に暴れてるのも、99年間西側世界に属してたとはいえ、結局は中国人の出鱈目さのDNAを受け継いでいるから、と考えれば、分かるような気がします。

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せっかく近くにいるので「香港デモ」チェックに行きたいんだけれど、ぐっと我慢して、当分は(少なくとも報道陣が沢山群がってるようなところには)行かないでおこう、と決意しています。もちろん体調と経済面の問題もあるのですが、物見見物のような、お約束的取材は、したくありません。

中国滞在中は、自室に閉じこもって、単行本化予定の「香港デモの真実!」の纏めに、ひたすら取り組みます。

中国広州のアパートで蟄居するにおいて、最大の不満は、近くに数件ある飲食店の食い物(焼きそば・焼きめしなど、100~150円)が不味すぎる、ということ。それで、今後はトーストを主食にしようと決意しました(ギリシャで食べたトーストが美味しかったから)。

こんがり焼けたトーストにバターをつけて、、、むろんトースターが必要です。昨日、モニカが買ってきてくれることに成っていました。買ってなかったです。なんか理由を付けて言い訳みたいなのをしています。複雑な英語だと、何を言ってるのかわからない。

今日は11月11日であること。スーパーでなんかイベント見たいなのをやってること。膨大な買い物客がいること。ディスカウントがあること。郵送に日にちがどうの、、、とか。それが僕の読解力ではストーリーとして繋がらない。だから買ってくれていないのか、後で買ってくれるのか、、、。つくづく自分の言語(ことに聞き取る)能力の乏しさに、情けなくなってきます。

あとでヤフーニュースを見たら、11月11日は「独身の日」だったそうですね。アリババの新会長によって大イベントが仕掛けられ、過去最大の1日2兆円以上の売り上げを成し遂げたと(中国恐るべし)。お金の支払いや商品の受け渡し方法がこれまでと異なる、みたいなことが書かれていました。

モニカから改めてメールが来て、5日後に渡す、とか。5日後って広州にいないでしょが、、、。片道6時間かけて翁源まで取りに行くってわけで、香港行きのバス代と宿泊費が無くなってしまう。

お米を持ってきてくれたので、ジャガイモとかタマネギとかをおかずにして、餓死せぬよう食い繋ぎます。

「香港デモの真実」ですが、纏めるのはなかなか大変です。一応、「現代ビジネス」掲載の中国・香港関係の記事だけで、一冊分作ることは可能です。でも、U氏のリライトは、僕の真意を全然汲んで呉れていない。U氏なりに努力して、より一般的な話の流れに持っていこうとしていることは分かるし、感謝はしているのだけれど、どの回も結果として話が噛み合っていません。

むろん講談社からの刊行は不可能でしょう(10万部見込める本でないと出してくれない)。これから引き受けてくれる出版社を探し、(話題の旬のタイミングもあるし)来年の春辺りには刊行したいと考えています。

責任を持った内容にするためには、大幅に(ほとんど一から)書き直さねばなりません。

売るためには、内容二の次で、「現代ビジネス」のブランドを前面に押し出し、掲載記事そのままに近い形で纏めたほうが良いのかも知れない。

いずれにしても20日間やそこらで、完成出来るのか? 現時点では、しっちゃかめっちゃかの状態です。

とりあえず「前書き」だけ出来上がったので、紹介しておきます。

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その前に、香港デモの現在。

先日「最初の認定死者」という記事が出ていました。数か月前も似たようなこと言ってましたね。両方とも、ビルの上からの転落です。殺害説、自殺説、事故説、、、、いろいろとあるわけです。

これだけ縦横無尽に「暴動」が続いていると、死傷者が出ないほうが不思議なくらいです。香港の警察は、よく頑張ってると思いますよ。市民の安全は守らなくてはいけないし、といって暴動を止めようとすると、「警察が一般市民を虐殺する」と責められます。

日本の世論においては、警察は絶対的存在です。悪人は撃ち殺してよし、脅迫犯人は即死刑に、と言った意見も普通に聞かれます。

香港に対する日本の世論は、その正反対のことを平然と言い放ちます。警察は、そこに存在しているだけで「悪」といった様相になっています。襲ってくる暴徒(もとい、正義の使者、だったですね)の腕でも掴むものなら、「殺人未遂」と声を張り上げられます。

どこからか(明らかに別の国のものを含む)香港デモとは関係のない虐殺の写真を探し出して来て、「これが香港警察の暴力」とアピールします。回りに警察がいないのに、ひざまづいて手を合わせて拝みながら「警察よ、どうか私を殺さないで」とパフォーマンスしたりします。それが、世界(ことに日本)に配信されるのです(いつか、どこかで見た光景です)。

と同時に、学生たち側は、やれる限りの暴動破壊を繰り返します。中国共産党の悪をやっつける「正義の人々」ですから、何をしても許されるのです。回りの市民(暴動に参加していない若者達など)の多くは、それを黙って、時には拍手や万歳をして、見守って(従って)います。「お国のための特攻隊員」を旗を振って応援する、いつかの日本国民のように。

集団幻想です。僕たちが、香港を変える、世界を変える、自由を、平和を取り戻す、、、と。上手くやったやつは、大金持ちになれます(まあ、もともと彼らは金持ちなわけですが)。世界は、その繰り返しで成り立っているようにも思えます。

中国共産党が「悪」である根拠の一つは、自由選挙が為されていない、と言う事にあるようです。しかし、僕は「自由」という概念は、相対的にのみ成り立つものだと思っています。極論すれば、「選ばれた多数が少数を排除していく」のが選挙の仕組みではないでしょうか?

同意をより多く集めた「力」の集団が突出することにより、そこへの一方的な空気の流れが生じ、結果として、少数に対する現実的な制圧が為される。

僕は決して共産主義を肯定していません。でも、僕のような、社会の外側にいる“邪魔者”にとっては、「結果として弱者が制圧されてしまう民意の力」よりも、「最初から均等に制圧をかけている独裁政権」のほうが、最低限の自由を与えてくれるように思えるのです。

香港デモのきっかけは、「逃亡犯条例の撤回要求」(逆に、逃亡犯を香港が受け入れること自体問題なのでは?という意見もあります)だったはずですね。それがとっくに撤回されているのに、、、。

最終的な目的は、「警察の横暴」(「中国共産党」の横暴)を世界に晒すことにあるのだと思います。かつて柴玲氏が言ったように「流血を期待して」、それが行われるまで、「香港は、自由であるべき、民主政治が、普通選挙が、行われるべき、、、、」と、メディアのスクリーンに正義の暴動を流し続けるのでしょう。

香港の正義を貫徹する、すなわち自分たちの既得権利を厳守する、そのためには、どんな手段も厭わない、という事です。

我慢比べです。

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今日アップされていた香港デモ絡みのヤフーニュースの一つと、それに対するコメントの最初の3つ、および僕(=milk)を含む幾つかのリコメントを抜粋しておきます。

【香港、実弾発砲、活動家女性「警察は殺人鬼のよう」(テレビ朝日系(ANN))】

警察官がデモ隊に実弾を発砲したことを受けて「民主の女神」と称される活動家の女性が怒りをあらわにしました。民主の女神と称される活動家の周庭(アグネス・チョウ)さんは11日にツイッターで「実弾に撃たれて意識を失って倒れた若者に対して、香港警察は応急処置をするのでも、救急車を呼ぶのでもなく、無理やり立たせようとしました」「もう親中派か民主派かという問題じゃなく、善悪の問題です。香港警察はすでに殺人鬼のようです」と怒りをあらわにしました。また、香港の中心部で催涙弾が発射されたことに対して「警察は命と安全を無視し、ただただ香港人を殺したいようにしか見えません」と警察を痛烈に批判しています。


1 arg****
発砲を繰り返す警察を、デモ隊が憎むのは当然だと思います。いっぽう警察の背後には、習近平の意を受けた長官がいる。彼女は「早く成果を出し」て見せないといけないらしい。
それには警察の尻を叩くくらいしか方法はないが、暴力的な規制がエスカレートすると、デモはさらに激化するでしょう。結局は香港市民同士が殺し合い、さらに憎み合うことになる。むごい話です。
中国は、将来の台湾政策もにらんで、絶対にここで妥協はしたくないのでしょうが…この状況を変えられるのは、最終的には中国自身です。どこかでメンツを捨てて判断しなくてはならない。さもないと恐らくは中国自身に、さまざまなマイナスが跳ね返ってくるでしょう。


>milk*****·

中国側:
中国本土の1万分の1の面積で、何の資源もなく、地勢的利点もなく、由緒ある大国でもない、金持ちとエリート学生達だけが住む香港など、あってもなくてもどうでも良いと思ってるはずです(「面子」は確保せねばなりませんが)。英国からの返還後、中国に与えられた義務と権利は、99年の間に培われた全く異なる価値観の下で、互いに試行錯誤しながら最善の方向性を模索すること。

香港側:
英国植民地時代に培われた自分達の価値観を「正義」と信じているわけですから、「中国共産主義政策」に沿って、自分たちの既得権利が侵されるのは我慢ならない。望んでいるのは、ずばり第二の天安門でしょうね。正確には「報道」のされ方。僕は天安門事件の時、暴動の現場にいました。後の報道の大半は、西側メディアのでっち上げです(ある意味「天安門事件」は成功していた)。警察に対する徹底した挑発、「流血」を世界にアピール。それに尽きます。


② kooj****
コメント見てると、ずいぶん香港警察に味方してる人が多いんだね。
香港市民はどうすることもできなくなってるのでは。平和的なデモを続けていては無視されそのまま潰され、今までの自由はなくなる。それは決して譲れない。だから香港警察がしてくることに対応してきた。香港警察がエスカレートすればするほど、デモ隊も過激になるだろう。本当は中国以外の誰かに助けてほしいんだと思うが、諸外国は自国の利益のために黙っている。
この先はきっと中共による軍を使った制圧になって第二の天安門になりそうでつらい。
ここが落ちれば、次は台湾。
中国はもっと自国のあり方を考えなければ、そのうち世界中の国々から期待締め付けに合い(今もあってるのかな?)、歴史の通り内乱が起こるかもよ。
あと、ウイグル、なんとかしてほしい。国連って役立たず。

>sam*****
あの、、、ウイグル人ですけど、、別になんとも思ってないです、、あなたたちがこんなにまったく関係のない私達を味方してくれてるのは非常に感謝な気持ちで胸がいっぱいですが、、、これ以上の平和とか民主とか、望んでもいないし、仮に何が実現できたとしても、なんか、かえてわるくなるかと思うんですよ、香港の件もそうですが、昔ウイグルにも暴動があったことご存知でしょうか?あれはデモではありませんでしたよ、怖かったです、正直迷惑。。逆にもうちょっとはやく警察が実弾で制圧すればあんなに被害もなかったはずです。あれから本当に色々あったんですがあなたはそれをご存知でしょうか?
世界中の人たちが私達を応援してくれてるのは非常にありがたいです。日本も大好きですが、香港の件もそうですが、、度が過ぎます..あれもデモな中に暴動も挟んでるから非常にややこしいです。
ん、、難しい国ですね...

>milk*****
コメ主の方に質問。
貴方は、現場で、警察、および学生たちの、実際の行動を(トータルに)見てきましたか?
(僕は6月12日以来、ずっと現場でチェック続けています)
貴方は、中国本土、および香港で暮らしてきたことがありますか?
(僕は中国本土⇔香港を30年間余行き来しています)
「中国共産党」が「悪」で、「香港の民主主義」が「正義」という根拠は、どこにあるのですか?
香港民主派の人達の言う「自由」だけが、自由の全て、だと思っていられるのでしょうか?(僕は「共産主義」には否定的ですが、と言って「民主主義」が「自由」に直結するとも考えていません)。


③ arc****
お互いに命をかけてやっている。共産主義がバックについている警察と民主主義を経験した国民の戦いです。警察は治安を守るためにやっている、国民は自由を守るためにやっている。価値観の異なった勢力が無理を通そうとガチンコするとお互いに血を流すことになります。ここで仲裁に入れる国はイギリスしかないがイギリスも自分の国が2つに割れていて今はそれどころではない。警察も国民も一旦休戦して冷静にならないともっと多くの血を流すことになります。自由のない共産主義には個人的に反対ですが、人間の叡智を使って解決する方法は無いのですか。

>milk*****
arcさんの意見、賛同します。
bluさん、殺人犯罪は、暴徒のほうです。
多分日本の屋内で(恣意的に編集された)ニュースを見ているのだろうbluさんとは違い、僕は6月12月以来今に至るまで、常に現場で見ています。物事は客観性を持ってみる必要があります。
この暴動は「中国共産党は悪」「香港民主主義は善」という大前提に基づいて起こったようなものです。僕は「反共産党」の立場にある人間ですが、必ずしも「共産主義思想」の全てが悪いとは思っていないし、「民主主義政策」の全てが正しいとも思っていません。
「天安門事件」の際、「流血騒ぎを期待している」と扇動し、自らは米国に逃げて優雅な暮らしをしている柴玲さんと、香港の民主の女神はそっくりです。
親たちは英国の召使だったのに、返還前後に生まれた若者達は中国の配下になる、そりゃ嫌でしょうね。だから「一国二制度」を設けて、皆で方向を模索しているのです。

>gocha***** (←これが日本人の一般的な意見のようですね)
民主主義を知った後で、中国共産党による弾圧・虐殺が当たり前の悪政支配下には入りたくないだろ。

>c&c Server; err 503***** (←たぶん、こっちが世界標準)
海外在住です。
日本国内の人は観ることがないのかも知れないが、AFP通信などを観るとどっちが殺人鬼?と言いたくなる報道の数々。。
暴動に抗議する市民二人が火だるまにされたり、集団暴行、口を割くように切られたり、、やってる事が残虐過ぎるよ。
警官だって火だるまにされたくないんだから、向かって来る暴徒を射つしかないと感じるね。

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『香港デモの真実!』 まえがき

はじめに

2019年も、世界のあちこちで様々な紛争が勃発しました。東アジアでの紛争の話題の一つが、香港におけるデモ活動の激化です。

今日も、香港中心部の街角では、半年前から恒例のように続いている学生たちと警察の衝突が行われているのでしょう。しかし筆者は、あえて見に行くのは止めることにしました。

筆者は、いろいろと想うところがあって、メディアの報道とは別の方向から、果てしなく続くデモの「正体」のようなもの(それはたぶん「同調」という「空気」に基づいている)を探ろうと考えています。

香港の問題は、中国の問題でもあります。両者の関係は複雑です。30数年間に亘る筆者の中国(必然的に「出入国時の」香港も)滞在中に体感した「空気」から伝えていくことにします。

筆者が最初に中国を訪れたのは1988年春のことです。その時は、香港経由ではなく、神戸からフェリーで上海に上陸しました。

ちょうど中国経済が急成長を始める直前です。道を歩いていると、ぞろぞろと中国人がついてきて、口々に「チェンジ・マネー」(外国人は中国元と異なる「外貨」の使用を義務付けられていて、それを中国人たちが欲しがった)と叫びます。至る所にツバや痰を吐き掛け、大量のゴミが、当たり前のように道端に投げ捨てられていきます。大変なところに来てしまった、と思いました。

翌年、重慶の大学に留学しました。筆者は40歳になっていたのですが、中学一年生の時以来の学生生活です。日本とは余りに異なる(はっきり言って余りに民度が低いとしか言いようのない)中国での暮らしに加え、数少ない日本人エリート留学生たちからは壮絶な虐めをうけ、それはもう、辛い思いをしました。

翌年、成都の大学への転校手続き中に、「天安門事件」が起こりました。北京から遠く離れた成都や重慶でも、連動して同様の暴動が発生していたのです。

筆者はその頃から、中国への入国を香港イン・アウトに切り替えました。筆者の主要調査地(野生生物の探索のために中国での活動を行っています)の、中国西南部(四川省・雲南省など)に向かうには、より便利だったからです。

それらの奥地から香港に戻って来た時は、「生きて生還出来た」と、心の底からホッとしたものです。中国本土と比べて、圧倒的に近代的な香港の街や人は、民度もマナーも日本と変わらない、と感じていました。はっきり言って、その頃は筆者も、中国の共産主義社会は「悪」、香港の民主主義社会は「善」と、疑いもなく思っていました。

あっという間の30年です。その間に「英国から中国への香港返還」も為されたわけです。今20歳前後であろう、デモや抗議の中核を成す香港の若者たちは、その頃に生まれたことを思うと、感慨深いものがあります。

天安門事件から30年、香港返還から22年、中国や香港は、どのように変わったのか、あるいは“変わっていない”のか、それを筆者が感じたなりに検証して行きたい、と思っています。

筆者は、本書の中で、中国を強く非難したり(時には蔑むような表現をすることもあると思います)、逆に中国を弁護したり(その反動で香港や日本の姿勢を強く批判することもある)、様々な立場に身を置きます。

答えや同意を求める読者の方々には、思想が一貫していない、まあいわば、支離滅裂、と受け取られるかも知れません。でも筆者は、それで良いのではないかと思っています。全ての物事を、一つの方向に決めつけて判断する必要はないでしょうから。

一昨年の夏から、インターネット・マガジン「現代ビジネス」(講談社) に不定期掲載を行ってきました。うち約半分が、世界各地の野生生物を対象とした「生物地理の不思議」。残り半分が、中国での調査活動中に出会ったり感じたりした、様々な現象についてです。本書の一部は、その後半部の記事を基にして再構築したものです。

今年の6月には、香港で大規模な(実質的に「反中国」の)デモが起こり、その運動は今も途切れることなく続いています。中国本土の人々にも、香港の人々にも、等しく親しんで来た筆者にとっては、哀しく辛い現象です。

しかし、今起こっている実態や、そこに至る背景は、日本のニュースで配信されている解釈とは、ちょっと違うように思うのです。

政治学者、経済学者、文化人類学者、、、といった「有識者」に比べれば、筆者は遥かに無知であることを自認しています。でも逆に言えば、無知であるからこそ、見えてくるものもあるとも思っています。

野生生物の観察と同じスタンスで、中国本土や香港の「人間社会」を、出来る限り客観的に観察していきたい、、、そのような発想に沿って書き著したのが、本書です。

「一貫していない立場を一貫してとる」ことが、筆者のポリシーですが、一つだけ一貫していることがあります。「事実は一つではない」「正義は一つではない」という想いです。

その想いが読者に伝わることを願っています。


2019年11月10日 中国広東省にて